真心ブラザーズ PACK TO THE FUTURE

2015.10.7.wed.  RELEASE

真心ブラザーズ初のカバーアルバム!収録楽曲は全編女性アイドル!!!

1970年~1980年代に発表されたヒット曲が、真心ブラザーズの2人の手によって、オトナの極上ユルロックに大変身! アイドルブームに沸く現在の音楽シーンに、その礎となった名曲カバーで一石を投じるコンセプト・アルバム。
同時代を共有したリスナーには、かつての思い出が蘇える楽曲であり、当時を知らない若い世代には“YOUNG

PERSON'S GUIDE"として、音楽との新たな出会いや新たな出会いや新たな発見になるであろう一枚!
アルバムタイトルに『PACK TO THE FUTURE』と名付けるあたりも、まさに彼ららしい“遊び心"と、一見相反するような"音楽に対する真摯さ"を感じさせる!
本作をリリース直後には、今作をお披露目する全国ツアーも決定!!!

仕様

『PACK TO THE FUTURE』
カバーアルバム
『PACK TO THE FUTURE』
2015年10月7日(水)発売
価格:¥2,778+tax
品番:TKCA-74277
●初回生産分のみ紙ジャケ仕様

特典1:シークレットXmasパーティーへご招待

「PACK TO THE FUTURE」をご購入、ご応募いただいた方の中から抽選で、50組100名様を、「真心ブラザーズSECRET CHIRISTMAS PARTY」へご招待致します。奮ってご応募下さい!

「真心ブラザーズ SECRET CHIRISTMAS PARTY」
会場:都内某所
日時:12/23(祝・水)14:00open / 14:30start
応募締切:2015年11月23日(月・祝)※当日消印有効

※その他詳細は、CD封入の案内をご確認下さい。

特典2:ショップ別オリジナル特典先着プレゼント

10月7日(水)発売 真心ブラザーズ初のカバーアルバム『PACK TO THE FUTURE』を、対象店舗にてご予約・ご購入の方に、先着でオリジナル特典をプレゼント!
無くなり次第終了となりますので、是非お早めのご購入をお願いいたします!
※一部、お取扱いの無い店舗もございますので予めご了承ください

■タワーレコード全店(オンラインショップ含む)
PACK TO THE FUTURE 特製クリアファイル

■Amazon
PACK TO THE FUTURE 特製ポストカード

■楽天ブックス
プリントサイン入り真心ブラザーズ壁紙
(待受画像、PC/スマートフォン iOS/Android対応、ガラケー非対応)

■下記対象店舗
PACK TO THE FUTURE ジャケットステッカー

  • HMV ONLINE
  • HMV札幌ステラプレイス
  • コーチャンフォー新川通り店
  • 玉光堂パセオ店
  • 玉光堂イオンモール旭川駅前店
  • HMV ららぽーと柏の葉
  • HMV 大宮アルシェ
  • HMV ルミネエスト新宿
  • 山野楽器 銀座本店
  • ペットサウンズ
  • 新星堂アトレ吉祥寺店
  • 山野楽器 調布パルコ店
  • HMV ららぽーと横浜
  • 山野楽器 そごう横浜店
  • HMV ラゾーナ川崎
  • 新星堂上大岡店
  • 新星堂名古屋店
  • JEUGIA 三条
  • JEUGIA Basic
  • 大垣書店 イオンモール京都店
  • ミヤコ アリオ鳳店
  • 新星堂 天王寺ミオ店
  • HMV 阪急西宮ガーデンズ
  • HMV 広島本通
  • フタバ図書 TERA広島府中店
  • 今井書店 グループセンター店STUDIO WONDER
  • DUKE SHOP 高松

収録曲

収録曲

※赤字はオリジナル歌唱アーティスト(敬称略)/オリジナル発表年

真心ブラザーズ

インタビュー

『PACK TO THE FUTURE』、企画の成り立ち

──まずこの『PACK TO THE FUTURE』は、どこから始まったんでしょうか。

桜井オリジナル・アルバムが前年、2014年に出まして。今年もせっかくレーベルを立ち上げて「やるぞ!」みたいな感じなんで、何かプロダクツを作りたいんだけど、このキャリアで毎年がんがん新作を、っていう感じでもないじゃないですか? だからってなんにもしないのもイヤだな、っていう時に、徳間ジャパン制作部長の品川さんが、このアイディアを持ってきて。すごい言いにくそうに「普通のカバーっていうのもあれなんで……イヤだったら言ってくださいね? 昭和のアイドルをカバーするのはどうですか?」って。

YO-KINGそれで、女性アイドルっていうのは俺が言ったの。女性で縛っちゃったほうがおもしろいかな、と、その時話してて、思って。テーマに縛りがあったほうが、選曲とか限定されるからラクかなと。選曲、やっぱり膨大な海から探さなきゃならないから、いい魚を。ただ、“赤い風船”は、この企画云々より前から、ずっとカバーしたいなと思ってたから、“赤い風船”をいちばん古い曲として、そこから自分たちが体験したアイドルの時代に限定して選びましょうと。で、みんなで「あれもいい、これもいい」って言いながら選曲したんだけど。

──“赤い風船”、好きだったんですか?

YO-KING好きなんですよね。自分が思ってる……ほら、俺より一世代二世代上の人がさ、行ったことがないアメリカへの熱い思いを持ってたりするじゃない? そういうのと同じで……そこに俺もいたんだけど子供だった、大人としてすごしていない70年代への憧れみたいなものが凝縮されてんの、“赤い風船”って。このイントロとAメロで……なんかね、現実の70年代とは違うんだろうけど、自分の思ってる日本の70年代っていうのが凝縮されてんの。

──桜井さんがこのカバーアルバムのアイディアに乗ったのは?

桜井だってこんなの、楽しいに決まってるじゃないですか? 逆に「いいんですか? やって」ぐらいのもんですよ。超『ザ・ベストテン』世代ですから。中には知らない曲もありますけど……選曲はメンバーだけでなく制作スタッフ全員でやるんですけど、やっぱり盛り上がるんですよね。「あんな曲もあった、こんな曲もあった」って。「絶対そんな曲やんないよ!」っていう曲を提案されても、一応その人に説明させてあげる、みたいな。それで会議が5分長くなるけど、そこは聞いとこうよ、みたいなのでワイワイ盛り上がって。

YO-KINGそれで選んだら、ここに入ってる3倍ぐらいになったもんね。それで各自聴いて、また集まって、しぼっていって。

──桜井さんが強く推した曲は?

桜井俺はね、いちばん推したのは“ゆ・れ・て湘南”(石川秀美/1982年)かな。こういうアルバムは、歌う人がいちばん大事だと思うので。まず歌う人が気持ちよく歌えるという前提で、その上であえて強くリクエストさせていただくなら、“ゆ・れ・て湘南”でしたね。YO-KINGさんの中の70年代が“赤い風船”なら、“ゆ・れ・て湘南”は80年代なんですよ。俺の思う80年代感。湘南というかね、(横浜の)大黒ふ頭あたりが浮かぶんですけど。“スニーカーぶる~す”(近藤真彦/1980年)感といいますか。湘南っていうと、国道134号線あたりだけど、この曲の感じは国道15号の工場のある海、みたいな。そういうせつない雰囲気が漂ってる曲で。

──ギリギリまで残ったけど最終的に入らなかった曲とかありました?

桜井 ありますよ、プリプロまでやったけど断念した曲たちも。……やっぱりキャンディーズとピンクレディーは、子供の頃いちばん影響力のあった女性アイドルだから、当然候補には入れてたんですけど、いろいろ難しくて。ピンクレディーの曲だと、あの歌詞のぶっとんだ世界観は、YO-KINGさんが歌ってもハマりそうにないな、とか。増子(直純/怒髪天)さんが歌ったらすげえ楽しそうだけど(笑)、うちじゃないのかも、とか、そういう逡巡がいろいろあって。

YO-KING最近はわりとそうなんだけど、特にこのアルバムに関しては、僕が家で聴きたいものを作る、という覚悟があったんです。そこは譲らないところにして、何か迷った時は「俺が家で聴きたくなるのはどっちかな」っていう基準でジャッジしていったかな

──やっぱりこの時代の、歌謡曲にニューミュージックの作家が入ってきた時代の感じが出る選曲になってますよね。それを狙ったかどうかはわかりませんけども。

桜井狙ってるよ、少なくとも俺は。やっぱりこの年代の歌を録音するにあたって、その年代に聴いていたサウンドとかフレーズとかを放り込みたいなっていう思いはいっぱいあったので。やっぱりこういうのって、自分の育ってきた思いみたいなものをちゃんと放り込まないと、魅力的なものにならないでしょ? 「俺、これすごい好きなんだよ!」って、原曲をよく知らない人にアナウンスしたいし、よく知ってる人とは共有したいから。

──Low Down Roulettes(ドラム伊藤大地、ベース岡部晴彦)と一緒にレコーディングしようと思ったのは?

桜井Low Down Roulettesがバンドとして調子いいっていうのも大前提としてありながら、あのふたりは微妙にこの曲たちを知らない、っていうのがけっこう大事で。ビバさん(須貝直人/MB’Sのドラマー)とか、下手したらオリジナルのほうで叩いてたりするからね(笑)。それはちょっと、本物だとカバーする意味が違ってきちゃうから。特に彼らは80’s感、あの無機質なエイトビートの感じとかを全然知らなくて、それを必死にやっているのがいい感じでしたね。

──桜井さんがアルバム全体にスティールギターをたくさん弾いているのは?

桜井これはYO-KINGさんの譲らない「こういうのが聴きたい」っていうところで。ある日、めったにこないメール的なものが来て、「スティールギターを弾いてください」「なんですって!?」みたいな(笑)。買いましたよ、だから。猛練習しました。

YO-KING結局はこのアルバム、4人で完結しちゃったんだけど、4人で全部やるって決めた時点で、アルバムのカラーってものがあったほうがいいかなと思って。で、とにかくスティールギターが好きっていうのと、あと(ボブ・)ディランが新作でカバーをしてたでしょ? あれもスティールギターがすごい入ってんのね。それから、ライ・クーダーを最近すごい聴いてたから……っていう流れがあって、スティールギター、スライド・ギターの音が全編あれば、一本スジが通るかなと思って。なるべくバラエティ方向じゃないスタートにしたかったのね。こういうアルバムだから、バラエティ豊かにしようと思ったらいくらでもそうなったと思うけど、それとは逆に……70~80年代女性アイドル、スティールギター、スライド・ギターがメインで鳴ってる、っていう縛りをかけても、ここまでのバラエティになるから。ここまでバラエティ豊かになったのも、俺は想定外だったの。もっとシンプルな、スタジオ・ライブみたいな音でもいいかなと思ってたわけ。でも、俺も途中で心変わりして、「やっぱりちゃんと歌うか」っていう気になってきた。ライブ風にアドリブっぽく歌おうかと思ってたんだけど、オリジナルのメロディをちゃんと歌ったほうがいいか、っていう気になってきて。ここ2~3枚のアルバムでは、いちばんちゃんと歌を録った。

──だってこれ選曲を見ると、10人MB’Sで演奏しててもおかしくないですもんね。

桜井そうなんですよ。ハデにしようと思えばいくらでもできるんだけど、そうすると80年代当時の、なるべくその時代にできるきらびやかなものを……っていう発想と同じになっちゃうので。

YO-KINGそっちで勝負してもね。

桜井って考えると、自分は10代の頃はバンドをやってたわけで。バンドサウンドでいいじゃないか、ということですよ。

インタビュー:兵庫慎司

『PACK TO THE FUTURE』全曲解説

──大滝詠一“君は天然色”のイントロをくっつけたのは?

桜井これはYO-KINGさんのアイディア。

YO-KINGそうそう。俺、大滝さんマニアよ? ナイアガラですよ、僕。まあでも、21世紀に入ってからなんだけど(笑)

桜井はははは!

YO-KINGでも、ハマるといっちゃうタイプだから。大滝さんのアルバムも全部オリジナルで、カネにものを言わせて買ったし(笑)。で、リハで“君は天然色”のイントロをくっつけるっていうアイディアが浮かび、パッとやってみたら……パッとできちゃうところがLow Down Roulettesのすごいとこで。そういうすごいクリエイティブなプリプロを重ね……もちろんボツにしたアイディアもいっぱいあるけど、採用したアイディアのひとつがこれだったの。で、“君は天然色”、『A LONG VACATION』の1曲目だったでしょ? だから、“風立ちぬ”が1曲目にならなかったら、あのイントロなしでもいいかなと思ってた。

桜井これはねえ、困りましたよ(笑)。この曲以外はバンドサウンドでやってて、歌謡曲の華やかさをバンドで表現する、っていう風にやってたのに、このイントロは、上ものがギターだけで、あの華やかさを出さなきゃいけないというミッションなので。だいぶ大変でしたね。原曲ではピアノのフレーズをギターで弾いたりして……中学の時ぐらい練習しましたよ、家で(笑)。鈴も買ったしなあ。そう、さっき言ったスティールギターもそうだけど、YO-KINGさんが「これやりたい」っていうことに対して、僕、現金いっぱい払ってるんですよね(笑)。「経費、YO-KINGで」って言いたいぐらい。でも、おもしろかったですよ。やっぱり大滝さんファンと、天国の大滝さんが笑ってくれないとダメだと思ったんで、それぐらいの気合いでやりました。

YO-KINGでもさ、子供の頃は、松田聖子の歌のうまさわかんなかったなあ。今聴くとうまいわあ。うまい! あのニュアンスの入れ方とか、絶妙なんだよね。

YO-KINGこれは僕が(吉田)拓郎さんファンとして知ってた曲で、レコーディングが終わったあとに、拓郎さん自身もカバーしてたことを思い出した。84年か85年のアルバムでカバーしてたから、俺、絶対聴いてるはずなんだよね。YouTubeにあがってるんだけど……川村ゆうこさん、フォーライフレコードの最初の新人アーティストで、拓郎さんがプロデュースしてるんだけど。TBSかな、拓郎さんがやってる番組が当時あって、そこで紹介してんだよね。「僕がプロデュースしてます」って。それがすごくいいんだよ。

桜井僕はこの曲は全然知らなかった。この曲をやろうってなったの、だいぶ後半ぐらいだよね?

YO-KINGそう、途中で思い出して。ただ、これはアイドルかどうか微妙なとこなんだよね。でも入れちゃえ、って。やっぱ、拓郎節が全編で聴けるところが好きっちゅうかね。

桜井これ、原曲のキーボードは、松任谷正隆さんが弾いていて。その間奏のシンセを「スライド・ギターで弾いて」って言われて、「ええっ!?」て。がんばりました(笑)。

桜井これはね、俺は知らない曲でした。

YO-KING俺は知ってたよ。

桜井これは品川さんが推してきて。でも、やってみたらすごいはまって、おもしろくて。これはどういうアレンジでやるかで、けっこう悩んだんですよね。

YO-KINGそうだね。3バージョンぐらいあって、最終的になかなか決められなくて。

桜井でも、ロック・ディスコ・バージョンがいちばんおもしろいから、これにしようと。1976年……俺、8歳だから、知らないよなあ。

YO-KINGこの曲は歌い方が……味系な歌い方で。素直な歌い方だよね。うまく歌おうとしてない、俺の好きな感じの歌い方。菅野美穂ちゃんとかもそうだよね。“赤い風船”もそうかな。

桜井原曲でいうと、この曲と“グッド・バイ・マイ・ラブ”が、すごい印象的なイントロなんですよ。なのに……現代のアレンジャーだと、イントロの印象的なアレンジを、曲のまんなかや最後にももってきてドラマチックに展開させる、っていうことをやるのに、この年代の人たちってイントロにしか使わないんだ。で、歌が始まるとスーッてまとめに入っちゃう。もったいねえ!と思うんですけどね。なんでそうしていたのか……当時のディレクターが「歌が始まったらもういいんだよ」って譜面から削除したのか、ラジオでかかるにはイントロだけドラマチック、そこで役は終わりっていう考えだったのか。諸先生方にきいてみたいですね。

──木之内みどり、のちに竹中直人さんの奥さんになった人ですよね。

YO-KINGそうそう。水原勇気の役、やってたでしょ?

桜井ああ! 『野球狂の詩』!(女性ピッチャーがプロ野球で活躍する水島新司のマンガが映画化された、その主演を務めた)

YO-KING映画でね。

YO-KINGこの曲、すごい(南)佳孝さん節だよね。かっこいい。スペインっぽいっていうか、南欧なメロディっちゅうかね。

──これはアレンジのポイントは?

桜井ポリスです!(笑)。“ロクサーヌ”です!

──まあ、聴いてそう思いましたけど。

桜井 「気づいてー!」って一生懸命言ってるでしょ、アレンジで(笑)。直球です。

──なぜ“ロクサーヌ”にしようと?

桜井「いけるかも!」と思って(笑)。なんかひらめいたんです、“ロクサーヌ”だって。

YO-KINGBPMも一緒にしたんだよね、“ロクサーヌ”と。

桜井だから、Low Down Roulettesのふたりはいろいろ試行錯誤してた。この80’s感……ポリスみたいなロックは彼らの中にはないんで。すごい研究してやってたよ。

YO-KINGこの歌、ちょっと歌いにくいんだよ。ブレスのポイントとか難しいよ、これ。不思議な歌だよね。

桜井何気にコードも難しかったんだよなあ。超歌謡曲アレンジだったので、コード感を崩さずロック寄りに変える、その匙加減が難しかったな。

YO-KINGこれはさっき言ったみたいに、70年代のイメージ。70年代の街の中っちゅうか、下町って感じ。

桜井これねえ、俺、アコースティックっぽいアイディアを持っていったんですよ。アコースティックギター2本とコンガみたいな感じのアレンジ。でも、原曲に近い、アコースティック・ロックみたいなほうに戻ったんだよな。ちょっとジェイムズ・テイラーっぽいものにしようとしたんだけど、ちょっと地味になっちゃって。といいながら、原曲はストリングスばりばりの超歌謡曲なんで、どのようにしようか困ったんですが……でも、Low Down Roulettesのリズムがね、すごいいいムードを出してくれたんで。わりと素直に弾けましたよ。コード進行は原曲と同じで、それをどのようにスライドで弾くか、という。ちゃんと聴くと、メロディとかコードとか、「なんでこうしたんですか? (筒美)京平先生!」っていう部分が何ヵ所かあって、おもしろかった。

YO-KINGこれは俺、知らない曲だった。

桜井これも品川さんの推しだったのかな。あと、なるべくカバーされすぎてない曲を……“17歳”とかすごいカバーされてるでしょ。それから単純に、歌ってみたらYO-KINGさんの歌唱と非常にマッチするといいますか、すごくいい曲にきこえたので。

YO-KINGこれは“赤い風船”とセットというか。5曲目・6曲目でひとつの世界観ができ上がってるというか。どっちも筒美京平さん作曲で。

桜井そうですね、年代も一緒だし。

YO-KINGこの曲は、「♪ふるさと持たないあの人のー」の「♪のー」のところの……。

桜井Cマイナーね。

YO-KINGそこだよね。そこのおもしろさが、楽器を弾けない人にも本能的にわかる楽曲だというのと、あとなんか……やっぱりシンシアさん(南沙織の愛称)は沖縄でしょ? 出身が。やっぱなんか、沖縄を連想させるような感じがするのよね、全体に。沖縄返還って1972年でしょ? すっごい遠くにそういうテーマもある曲なのかな、っていう気もする。「心のかげり 目にしみる」ってフレーズとかさ。深読みかもしれないけど、でも深読みさせるだけのものがある歌だと思う。

──テレビの歌番組で安田成美がこれを歌った翌日、クラスがその話題でもちきりだったのを憶えてまして。ただ、こうして聴き直すと、彼女が悪いんじゃないですね。これ、歌うのすっごく難しい曲だったんですね。

YO-KINGそう。難しい難しい、もう。

桜井細野(晴臣)さんの自由さ満載ですよ、作品としては。これはね、会議で「この曲あったね!」ってワーッて盛り上がったんだけど、「これをYO-KINGさんが歌いますか!?」みたいな感じで。おもしろくはなると思うけど、おもしろくなりかたによっては悲しい感じになっちゃうので、わりと両刃の刃だったんですけど。全体的にメルヘンじゃないですか? その世界観が。

YO-KINGああ、歌詞的にね。でも歌詞的な壁は、俺は個人的にはなかったけどね。

桜井なかったからよかったのかもね。

──これはアレンジは──。

桜井これもポリスですね(笑)。困った時のポリス頼み。でもこれは、ベスト・トラックといいますか、演奏、みんなが出したサウンド、エンジニアの録りかた、いろいろカチッとはまった作品だと思います。

YO-KINGこれ、サビの「♪風の谷のー」のところが、1番と2番でメロディが違うじゃない? 2番を1回目に歌っちゃう人が多いんだよね。俺もそうだったんだけど(笑)。

桜井真心の初期のライブで、この曲をカバーしてたんですよ。

YO-KINGだから初期のファンはニヤリとすると思う。アレンジは全然違うけど──。

桜井当時はロックな、ステッペン・ウルフな感じのアレンジでやっていて。だから、これはみんなカバーしてる曲だけど、こちとら昔からやってるんでい!っていうのもありながら。あと、去年NHKの『The Covers』に出た時にこの曲をやって、それをレコード会社のスタッフが観て──。

YO-KINGああ、そうだそうだ。そもそも、そこからこのアルバムの企画が始まったんだ。あとこの曲ね……吉田拓郎さんに“外は白い雪の夜”って曲があって。それ、作詞が松本隆さんなのね。で、こういうタイプの曲なのよ、男側の歌詞と女側の歌詞で。これは俺の想像だけど……拓郎さんが松本さんに「俺に”木綿のハンカチーフ”みたいな歌詞を作ってくれ」みたいな感じで“外は白い雪の夜”ができたんじゃないかな、と思うのよ。そういう意味で、昔から興味はあった、この曲に。あと、曲の最後で別れていくっていうのが、子供ながらにグッときてたのかもしれない。

──これは、さっき桜井さんの思い入れをうかがいましたけれども──。

桜井でまた、オリジナルの、一生懸命歌ってるっていう感じがいいんですよ。

YO-KINGそうなのよ。そこなのよね。うまい人はうまい人でいいし、そうでもない人が一生懸命歌ってるのが、アイドルのいいところであって。

桜井この曲のアレンジは……元ネタ言っちゃいますけど、ウルトラヴォックスっていうバンドの“ニュー・ヨーロピアンズ”っていう曲が、僕が高校に入ってバンドやって、初めてコピーした曲だったんですよ。当時の歌謡曲と自分のバンド体験をひとつにぶちこむっていう遊びを、ぜひしたかったんですよね。で、それをアレンジする時に、Low Down Roulettesが食らいついてくる感じがよかったですね。自分たちにない80’s感を、必死に。

──桜井さんが言うところの80’s感って、どういうイメージですか?

桜井あのねえ、基本、タメがない。カクカクしたエイトビートで、でも必死にやってる、みたいな……今、話してて思ったけど、当時の日本のアイドルの女の子たちの姿勢と、ちょっと似てるかもね。ニューウェイブってさ、パンクのあとだから、基本、下手なんですよ。下手なんだけど、自分の思うかっこいいものを、センス一発で表現したい、その心意気が音に表れてると80’s感を感じる、みたいな。

──つまり、ひらたくいうと、Low Down Roulettesはうますぎるんですね。

桜井そう。確かハルくん(岡部)が最初、フェンダーのベースを使ってて、「ちょっと音がよすぎる」って。で、そのへんにあったトーカイのベースを弾かせたら、はまった(笑)。「これこれ!」って。あと、歌でさすがだなと思ったのは……これ、歌詞に「Please Please Me」「Hold Your Hand」ってビートルズの一節が織り込まれてて。「Hold Your Hand」のくだり、石川秀美さんは思いっきり「♪ホージョーヘーン」って歌ってるんですよ。たぶんどう発音していいかわかんなくて、ディレクターかなんかに「こう歌え」って言われたのを必死にやってるみたいな「♪ホージョーヘーン」が、聴いてるともうキュンキュンきて(笑)。で、YO-KINGさん、どう歌うのかと思ったら、そのまんま「♪ホージョーヘーン」って歌って、「さすが!」と(笑)。俺、そこをそう歌ってくんなかったら、言おうと思ってたんだけど。

YO-KINGそこはツボだよね。あと、「♪My Little Girl」のところも、「♪マイ・リル・グー」って、妙に英語っぽく歌おうとしてがんばってるところがいいのよね(笑)。口の中でこねちゃってる感じ。だから俺もこねて歌ったんだけど(笑)。

YO-KING聖子ちゃん明菜ちゃんで1曲ずつやろう、じゃあどの曲かね?って話になっていくわけじゃない、ミーティングで。俺は“少女A”は歌えねえなと思ったわけ、歌詞的に。で、後半のエキゾチック系の曲も俺が歌うのはきついなと思ったわけ……あの、(振付で)反る曲、なんだっけ?

桜井“DESIRE”。

YO-KINGそうだ。あんなに反れないし。

桜井(笑)反んなくていいでしょ、別に。

YO-KINGそれで「曲ないねえ」って言ってて、「見つけた、これだ!」って。これの最初のアイディアは、ボブ・ディランのカバー・アルバムの、すごいまったりとした、ロック以前のアメリカン・ミュージックっていうか、ジャズとポップスの間くらいのイメージで、スライド・ギターとかリバーブで妖しい雰囲気にして、2015年感を出せたらいいなと思ってトライした。

桜井この曲のアレンジは、やっぱり「“スローモーション”やなあ」っていうツッコミがほしくて、できるだけ遅く、みたいな(笑)。単に遅くしたので、尺がすごく長くなって。最後までみんなが起きてらんないような、絶対寝ちゃうような演奏を心がけました(笑)。

──この曲だけ、先に各地の夏フェスでやってましたよね。

YO-KINGああ、とっかかりとして、やりやすかったんですよ、フェスで。軽やかなアレンジだから。“スローモーション”とかはフェスできついでしょ?

桜井“風の谷のナウシカ”やってもポッカーンとされそうだし。そう考えるとこれは、曲の懐が深いのかもね。ライブでやってて楽しい曲だし。

YO-KINGこれはほんと、ソウル系の曲だから、いろんなアレンジができると思うよ。リアルタイムでは間に合わなかったけど、俺の好きな曲でさ。90年代に聴きたいなあと思って、CDを買った記憶があります、『アン・ルイス・ベスト』みたいなのを。オーソドックスなソウルで、ソウル歌謡っちゅうか……昭和感とサム・クック感、オーティス・レディング感がうまく混ざってるし。(忌野)清志郎さんとか歌ったら、すげえかっこいいと思うよ。懐の深い曲ですね。

桜井あとこれ、さっき言ったみたいに、元曲のイントロがすばらしいんですけど、やっぱりそこしか使われてないんですよ。俺だったらケツにもつけるのに、ないので、このカバー・バージョンではケツにも付けました。

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